葦原

ご飯が食べたいと思いました。
食事をとりたいのではなくて、栄養を得たいのでもありません。
ご飯を食べたくなりました。

そういうときに一番効くのがおにぎりです。
あるいはにぎりめしと言った方が適当かもしれません。
とにかく白いご飯が人間の手でかためられたものを
自分の手で持ってかじるのです。
できれば自分以外の人間がつくってくれたおにぎりが良いです。

お餅も効き目のあるものですが、
やはりご飯というよりは薬に近くて、
胡乱な言い方をすれば呪術が過ぎます。

おにぎりの中身はなんだって問題にはなりません。
自分でねだるのも、勝手に入れられるのも、
今ここにあるというだけのものでもそれぞれ滋養があります。

おにぎりの精華は人間の手の油です。
ご飯が食べたいとき、口に入れたいのは人間の手の油だったのです。