扁平

 今日あたり届くだろうと思っていた荷物が届かなかった。別に急ぎではないし、どうしても必要なものでもないので何かに差し障ることはない。近頃は便利になったもので、配送具合を追跡できる。できるけれど、しない。明日届くだろうか、もっと先になるだろうか、今どのあたりにいるだろうかと思う。
 届かなかったものは届かなかったので、大根を煮た。荷物が未着であることと大根を煮ることに順序としての関連はない。荷物がどうなろうと大根を煮ただろう。ここに因果の関係はない。
 大根の葉の方と尖った方とどちらから使おうかいつも迷う。味とか保存とかいろいろな線で判断できることは知っている。そういうところで判断しないことに決めて久しい。尖った方から使うことにした。どうしてそう決めたのだかもちろん説明できない。
 皮をむくのは楽しい。かつらむきという名前も愉快な感じがする。あまり長く煮続ける気にならなかったので鉛筆よりちょっと太いくらいにして、さらにいちょう切りにした。もう迷わない。
 大根だけが入っている鍋は気持ちがいい。豚肉や魚が入っているとそうならない。白い大根がだんだん茶色くなるだけのことが愛おしくてたまらない。茶色は美味しい色だから実益さえある。
 煮ている間ずっと見つめているわけではない。ときどき戻ってきて様子を見るに留める。見るたびごとに大根は元の姿を失って、すなわち煮える。やわらかい茶色に変わる。まだもうちょっとかかるな、と思った後でそういえば荷物が届かなかったなと考えた。

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