脚立

白い服を着るのが苦手でした。
なぜ、いつから、どのくらい苦手だったか語ることは難しいです。
それを語れたらたいして苦手でないような気もします。

気象は変わります。
白い服を着てみたいという気持ちができました。
そこに偶然が添加されると、現象も変わります。
衣料品店が安売りをするという話をたまたま知り得て、
他の用事のついでに寄ってみたところ白い麻のシャツがありました。
完璧だと思ったので買いました。

買ってしばらく放っておいて、
新しい服をおろすのにちょうどいい予定ができたので着て出かけました。
おろしたてで触るとまだぱりぱりと音がするようで
すこぶる良い気分になりました。

予定が終わってから安直に海を見に行きました。
雲でも霧でも霞でもない何かが充満していて、
海と空の境が曖昧で、何がどこからどうなっているのか判断できませんでした。
そういう海も良いものだと感じているときに
何かの拍子に自分の着ているシャツを見ました。
そこいらにある何よりも白くてあかるいので、
面映ゆく、誇らかで、静かな気持ちになりました。

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